長安寺のブナ林について

長安寺の裏山には、5.28ヘクタールものブナ林が広がっています。春から夏にかけての新緑、秋には紅葉、また冬は雪景色と四季折々の表情がたのしめます。

ぜひ見学にいらしてください。

1987年(昭和62年) 緑地環境保全地域に指定

2020年(令和2年)   日本遺産「究極の雪国とおかまち

          ー真説!豪雪地ものがたりー」に認定

1995年(平成7年)より長安寺のブナ林を調査してくださっている田中信行先生よりご寄稿いただきました。ぜひご一読ください。

長安寺ブナ林の価値

 

著:田中信行先生(元東京農業大学 教授)

 

 本堂を囲むように斜面に広がるブナ林は、環境保全的にも生態学的にも価値のある自然林です(写真1)。ブナ林は、山の崩壊や土壌の浸食を防止し、きれいな水を下流に供給するとともに、野生動植物の住みかとなっており、高い環境保全機能があります。新緑や紅葉の時は特に美しく、仏閣の森林としての荘厳さも備えています。ブナ林は、日本の代表的自然林で、広大な面積で広がる白神山地は、その価値が世界的に高く評価されユネスコにより世界遺産に指定されています。長安寺のブナ林も、白神山地に見られるブナ林と共通する植物によって構成されています。

 新潟県では、標高200m~1700mがブナ林の分布範囲ですが、低標高域は頻繁な伐採が行われた後に成立した不良薪炭林(ボイ山)、スギ人工林、農耕地、都市などに改変され、ブナ林は多くありません。しかし、十日町付近には、低標高域にもブナ林が多く見られます。特に長安寺のブナ林は、集落地にあるにもかかわらず、下刈りや伐採など人為による攪乱が少なく、自然度の高いブナ林の特徴をもっています(写真2)。これらの点が評価され、新潟県自然環境保全条例に基づき緑地環境保全地域に指定されています。

 長安寺は、白神山地より約400km南に位置し、標高も250mと低いので、ブナの生育域では最も暖かい気候条件にありますが、夏の雨や冬の積雪が多いために、ブナ林が成立できるのです。しかし、ブナ林生育域の辺縁部に位置するため、気候温暖化の進行に伴い衰退が予測されています。日本ではすでに、過去100年間に1℃以上の平均気温の上昇が記録されています。現在進行する温暖化がブナ林に悪影響を与えることが心配されます。2017年4月の調査では、温暖化に伴う悪影響(稚樹の消失、虫害など)は特に認められませんでしたが(写真3)、将来も良い状態で自然林が維持されるか注意深く見守っていく必要があります。

 十日町周辺の多雪環境に成立するブナ林は、世界的に見れば稀有な森林です。多様な価値をもつブナ林が今後一層地元から愛され、国内外から価値が理解されていくように微力ながら努力したいと思います。

写真1.長安寺のブナ林

写真2.自然な状態のブナ林内

写真3.林の健全性の指標となるブナ稚樹が見られる